この記事を読むとわかること
- 新人・若手エンジニアがプロジェクトマネジメントを学ぶべき理由
- P2Mを中心としたプロジェクトマネジメントの基本と考え方
- 自分を守るために活かせる実践的なマネジメントの学び方
「プロジェクトマネジメント」って聞くと、ちょっと難しそうですよね。
きっちり計画を立てたり、チーム全体をまとめたりする――そんなリーダーだけが知っていればよいものと考える人も多いと思います。
でも実は、現場で働く新人・若手エンジニアも知っておいた方がよいものなんです。
なぜなら、プロジェクトマネジメントを知っていると、トラブルや理不尽な状況の中でも「自分を守ること」ができるようになるからです。
この記事では、プロジェクトマネジメントとは何かをわかりやすく解説しながら、なぜ若手エンジニアにとって“身を守る知識”になるのかを、私の経験を交えて紹介します。
「上司がやってくれるから大丈夫」――そう思う前に、ぜひ一度読んでみてください。
この考え方を知っているだけで、あなたの仕事の見え方がきっと変わります。
なぜプロジェクトマネジメントが必要なのか
どんなに優秀なメンバーが集まっても、チームがバラバラに動けば、プロジェクトはうまく進みません。
そんな中で全員が同じ方向を向くためにあるのがプロジェクトマネジメントです。
これは上司やプロジェクトマネージャーの仕事ではありますが、新人や若手エンジニアも知っておいた方が良いものです。
チームをまとめるための道しるべ
プロジェクトマネジメントは、チーム全員が迷わず動くための道しるべです。
誰が何を担当し、いつまでに終わらせるのか。
全体を整理しておくことで、ムダな作業や遅れを防げます。
開発の現場では、設計・コーディング・テストなどいろんな作業が同時に進みます。
だからこそ、全員が同じ地図を持って進むことが大事なんです。
これがプロジェクトマネジメントの役割です。
上司も完璧じゃない。だから自分を守るために知っておこう
「マネジメントは上司がやってくれる」と思うかもしれませんが、現実はそうとは限りません。
経験の少ないリーダーや、複数案件を抱える上司だと、計画がうまく立てられないこともあります。
結果として時間を無駄にしてしまい、残業でカバーすることにもなってしまいます。
月に20時間程度ならIT業界としては標準的ですが、月40時間(毎日2時間。20時頃まで)で黄色信号、月80時間(毎日4時間!22時頃まで!?)で赤信号といえるでしょう。
若いうちは何とかなりますが「残業でカバーする精神」は癖になるので、年齢が上がっても解消しない可能性があります。
そんなときに、自分がプロジェクトマネジメントの基本を知っていれば、「今どこに問題があるのか」「何を優先すべきか」を判断し、効率的に動くことができます。
プロジェクトマネジメントは、誰かのための知識というだけでなく、自分が安心して働くための武器にもなります。
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プロジェクトマネジメントの主な体系と特徴
プロジェクトマネジメントには、世界中でいくつかの考え方(体系)が作られています。
中でも有名なのがPMBOK(ピンボック)、PRINCE2(プリンスツー)、そして日本発のP2M(ピーツーエム)です。
それぞれの特徴を知っておくと、「マネジメント」と一口に言っても国や文化によって違いがあることがわかります。
PMBOK:世界で一番よく使われている基準
PMBOKはアメリカ発の考え方で、世界中で使われています。
計画の立て方、進捗の見方、リスクの扱い方など、プロジェクトを進めるうえでの共通ルールを整理したものです。
とても体系的でしっかりしていますが、少し難しく感じるかもしれません。
大規模なシステム開発や海外プロジェクトなど、組織的に動くときに特に力を発揮します。
PRINCE2:手順が決まっている実践型
PRINCE2はイギリス発の手法です。特徴は、プロジェクトをどう進めるかの手順がはっきり決まっていることです。
「誰が」「何を」「いつやるか」を文書でしっかり管理します。
官公庁の仕事や大規模システムなど、「ルールを守って確実に進める」場面でよく使われます。
仕組みとしては少し堅いですが、トラブルを防ぐ力が強い方法です。
P2M:日本らしい“価値を生む”マネジメント
P2Mは日本で作られたプロジェクトマネジメントの体系です。
アメリカやイギリスのように「決められたことを確実にやる」だけではなく、「プロジェクトを通じてどんな価値を生み出すか」を大事にしています。
たとえば、システムを作って終わりではなく、そのシステムがお客様や社会にどんなメリットをもたらすのかまで考えるというのが、P2Mの考え方です。
日本の働き方や現場の雰囲気に合っていて、特に若手エンジニアが「なぜこの仕事をしているのか」を意識するきっかけになります。
プロジェクトマネジメントの基本を押さえよう
プロジェクトマネジメントという言葉を聞くと、ちょっと難しそうに感じるかもしれませんが、実際のところはもっとシンプルです。
プロジェクトマネジメントとは“目的を達成するために、チーム全員が同じ方向を向くための考え方”なんです。
ここでは、P2Mの考え方に沿って、プロジェクトの特徴と、マネジメントが「現場でどう使う技術なのか」をわかりやすく紹介します。
プロジェクトとは“目的を達成するための一時的な挑戦”
P2Mでは、プロジェクトを以下のように定義しています(下記出典の書籍はちょっと古いです)。
プロジェクトとは、特定使命を受けて、資源、状況などの制約条件のもとで、特定期間内に実施する将来に向けた価値創造事業である。
要約すると、プロジェクトとは毎日同じことを繰り返す定常業務ではなく、“終わりが決まっている、毎回ゴールの違う生産活動”です。
プロジェクトの基本的な属性は3つあります。
属性 | 意味 | わかりやすい説明 |
---|---|---|
個別性 | ひとつひとつのプロジェクトが異なる | 同じ種類のシステム開発でも、顧客・環境・目的が違うため、全く同じプロジェクトは存在しません。 |
有期性 | 期限がある | プロジェクトには必ず「いつまでに終わらせるか」というゴールが設定されています。 |
不確実性 | 予測できないことが必ず発生する | プロジェクトごとに条件が違う「個別性」があるため、想定外の問題や変更が起きるのは自然なことです。 |
この3つの属性を理解しておくと、プロジェクトというものが「動きながら考え、柔軟に対応していく活動」であることがわかります。
プロジェクトマネジメントは“現場で使う技術”
プロジェクトマネジメントは、理論ではなく現場で使う実践の技術です。
P2Mでは、成果を出すために必要な力を4つの視点で整理しています。
- 公正な手段:チーム内外との関係を正しく保ち、信頼をベースに行動する力。特定の人に偏らない判断が求められます。
- 効率的遂行能力:限られた時間・コストの中で、ムダなく作業を進める力。スケジュール管理やタスク調整がここに含まれます。
- 効果的遂行能力:プロジェクトの目的に沿った成果を確実に出す力。単に“早く終わらせる”のではなく、“正しい方向に進める”能力です。
- 成果物獲得実践能力:上の3つをまとめ、実際に成果を形にする力。チームを動かし、問題を乗り越えて目的を達成する総合力です。
この4つの力は、どれも一度に身につくものではありません。
まずは「効率的に動く」ことから始めて、少しずつ「効果的に成果を出す」へと意識を広げていく。
それが、現場でマネジメントを学ぶ第一歩です。
さらに詳しく学びたい人のための学習方法
ここまで読んで「もっと深く学んでみたい」と思った人もいるかもしれません。
プロジェクトマネジメントは、知れば知るほど仕事の見え方が変わる分野です。
ここでは、学ぶためのいくつかの方法と、私の実体験を交えて紹介します。
どんな学び方があるのか?
プロジェクトマネジメントを学ぶ方法は、大きく3つあります。
それぞれの特徴を比べてみましょう。
学び方 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
P2M研修を受ける | 日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)などが実施する公式研修 | 体系的に学べて、現場とのつながりが理解しやすい。質問や議論を通して理解が深まる。 | 費用が高め(数万円〜十数万円)。時間の確保が必要。 |
独学で学ぶ | 書籍や動画を使って自分のペースで学習 | 費用が安く、手軽に始められる。 | 理解が断片的になりやすく、モチベーション維持が難しい。 |
現場で学ぶ | プロジェクトの実務経験から学ぶ | 実践的でリアルな学びが得られる。 | 知識の偏りが出やすく、体系的理解にはつながりにくい。 |
私のおすすめはP2M研修です。
正直に言うと、費用は安くありませんが、講師から直接フィードバックをもらいながら「理論と実践を結びつける」経験は、独学ではなかなか得られません。
現場経験がある人ほど、「そういうことだったのか」と納得する場面が多いはずです。
リスクマネジメントだけでも仕事は変わる
私が初めて「プロジェクトマネジメントって本当に役に立つ」と感じたのは、P2M研修で学んだ中の一部「リスクマネジメント」を徹底したときでした。
当時の案件は、定期的なリプレイスプロジェクト。
前任の先輩たちが他案件に移ってしまい、気づけば現場で一番の年長者だった私が、自然とマネジメントを任される形になりました。
前回のリプレイスプロジェクトで炎上を経験したこともあり、「同じ失敗は繰り返したくない」という思いで、P2M研修で強調されていたリスクマネジメントを徹底しました。
タスクごとに「問題が起きそうなポイント」を洗い出し、事前に解決したり、チームで共有しました。
結果、プロジェクトは大きなトラブルもなく、スムーズに完了できました。
リスクマネジメントを意識すると、自然と「スケジュールを妨げる原因と対策」に目が向くようになります。
それだけでも、現場での判断スピードや立ち回り方が大きく変わります。
「何か起きたらどうしよう」ではなく、「起きる前に備える」に変わる感覚です。
P2Mの全体系をいきなり学ぶのは大変ですが、リスクマネジメントだけでも始めてみるだけで、仕事の質が一段変わります。
一歩踏み出すことが成長への近道
プロジェクトマネジメントの学び方に「正解」はありません。
でも、確かなのは“学び始めた人から変わっていく”ということです。
P2M研修、独学、現場体験――どの形でも構いません。
自分のペースで続けていくことが、キャリアを強くする一番の近道です。
まとめ:プロジェクトマネジメントを理解することは、自分を守る力を身につけること
プロジェクトマネジメントというと、「チームをまとめる人だけに必要なスキル」と思われがちです。
でも、この知識は、現場で頑張るあなた自身を守るためにも有効なんです。
システム開発の現場では、計画変更、要件のブレ、スケジュールの無理など、思っていた通りに進まないことがよくあります。
そんなときにプロジェクトマネジメントを知っていると、「何が原因で」「どこにリスクがあるのか」を冷静に見極められるようになります。
上司がいつも完璧にマネジメントしてくれるとは限りません。
でも、自分がその仕組みを理解していれば、正しい判断を下すことができます。
“自分の身を守るための知識”としてプロジェクトマネジメントを学ぶ──それが、これからのエンジニアには必要な考え方です。
P2Mをはじめとする体系では、「公正に」「効率的に」「効果的に」進める力を身につけることを目指します。
これらは、単なる理論ではなく、現場であなたを支える実践的な武器になります。
特に、トラブルやリスクを早く察知できるようになると、周囲からも信頼される存在になります。
プロジェクトマネジメントを理解することは、チームを動かす力を得ること。
でもそれ以上に、理不尽や混乱から自分を守り、安心して働くための力です。
今日から少しずつでいいので、「今の仕事の流れを整理してみる」「リスクを一つ挙げてみる」といった小さな一歩を始めてみてください。
その意識こそが、あなたを守り、成長へ導く最初のプロジェクトマネジメントです。
この記事のまとめ
- プロジェクトマネジメントは「自分を守るための知識」である
- 上司任せにせず、若手のうちからP2Mを学ぶことが重要
- プロジェクトには「個別性」「有期性」「不確実性」が必ず存在する
- P2Mでは「公正」「効率」「効果」「成果物獲得」の4つの力を重視
- 独学よりもP2M研修が最短ルート。リスクマネジメントだけでも効果的
- プロジェクトマネジメントを理解することが、安心して働く第一歩になる